入れ歯との正しい付き合い方


入れ歯は人生を決める選択肢!高い買い物ではありません」にも書いたように、良い入れ歯はあなたの人生を豊かにしてくれる大切なパートナーです。
でも、どれだけ優れた入れ歯でも、やはり人工物です。体の一部として快適に使うためには、慣れるための練習・調整・お手入れ・定期健診などが欠かせません。

高いお金をかけてオーダーメイドの靴を作ったとしても、それがピッタリ足になじむまでは少し時間がかかりますよね。お手入れをせずにいい加減な使い方をしていては、せっかくの靴もダメになってしまいます。

入れ歯も同じで、使う方の心がけ次第で状態が大きく変わってきます。その入れ歯がお口に合った大切なパートナーとなるか、使いづらく不便な道具となってしまうかは、入れ歯の品質ももちろんですが、日ごろの接し方も大きなポイントとなるのです。

入れ歯との正しい付き合い方を知って、大切なパートナーとの関係を深めていきましょう。

入れ歯を使い始めたら

入れ歯の使い始めは、違和感や痛みを感じる方もいます。しばらくの間、歯がなかったところに入れ歯をはめたわけですから、お口がそれに慣れるまでは少し時間がかかるのはしかたがないでしょう。かみ合わせも変化するため、顎の関節や筋肉もこれまでとは違う動きになり、痛みが生じることもあります。

違和感や痛みがあると不安になってしまうかもしれませんが、通常しばらく使用を続けると体が入れ歯に慣れ、違和感や痛みは改善されていきますので、安心してください。

もし、しばらく使用しても一向に痛みが緩和されなかったり、むしろ強くなったりする場合には調整の必要があります。そのときには無理をせず歯科医院を受診してください。

入れ歯の使い具合をチェックする

入れ歯が完成し、自宅に戻ったら、日常生活での入れ歯の使い具合をチェックしてみましょう。
通常は、入れ歯を使い始めた1週間後~1か月後に検診があることが多いので、それまでに気になる不便や違和感があればメモを取り、検診で歯科医に伝えるようにしましょう。とくに検診の予約が入っていない場合も、気になることがでてきたときは歯科医へ相談しましょう。

もし、我慢できないような痛みがあり、数日たっても痛みが改善されないようなときはその時点で連絡をして、調整のための受診をしてください。

表情や発声を確かめる

入れ歯をはめた状態で鏡の前に立ち、自然な姿勢で口を開け閉めしたり、表情を作ったりしてみましょう。そして、「あいうえお」等の発声をしてみて、違和感がないかどうか、外観で気になるところがないかどうかを確かめてみましょう。

口が動かしづらかったり発声が難しかったりするときは、姿勢をまっすぐにして、口元の筋肉を意識しながらゆっくり声を出すように心がけてみましょう。

保険内のクラスプ(金属製のバネ)を使った部分入れ歯の場合、クラスプが舌にあたって話しにくいという方もいます。舌があたらないよう口を動かしてみても改善されないときや痛みを感じるときは、歯科医へ伝えましょう。

水を飲んでみる

入れ歯で初めて食事をとる前に、水を飲んでみましょう。一気に飲まずゆっくりと口に含み、ゆっくりと飲みこみます。入れ歯があることで口の中の状態が変化すると、違和感や飲みこみづらさを感じることがありますので、その場合はむせてしまわないように注意し、何回かくり返して慣らすようにしましょう。

食事はやわらかいものから

初めての食事のときは、硬い肉、繊維質の多い野菜、ゴマなど挟まりやすいもの、粘り気の多いもの、熱いものなどは避け、やわらかめに炊いた常温のご飯や魚の煮つけなどから慣らしていきましょう。

食べるときは一度にたくさん口へ運ばず、一口サイズずつ、ゆっくりと噛んでゆっくりと飲みこむようにしてください。

入れ歯と歯肉の間に物が挟まる、入れ歯がガタついて噛みづらい、強い痛みを感じるなどの場合は調整の必要がありますので、歯科医へ伝えましょう。

とくに問題がない場合は、食べたいものに少しずつチャレンジしていきましょう。

入れ歯での食事に慣れるまでの時間はとても個人差が大きく、お口の中の状態、残っている歯の本数、入れ歯の品質などでも違います。最初から色々なものが食べられるという方もいれば、一か月くらいはコツがつかめない、痛みや不自由を感じるという方もいます。

けれど、調整や練習をくり返しているうちに食べられるものは増え、食事を楽しめるようになります。違和感があるからと入れ歯をしないで食事をしていると、いつまでたっても入れ歯に慣れることができません。とくに保険内の入れ歯の場合は、使いこなせるまでに時間がかかることがありますが、調整や練習を積み重ねながら少しずつ慣らしていきましょう。

ただ、何も食べられないくらい痛んだり、吐き気がするほど不快だったりする状態が続くようなら、入れ歯使用を中止し早めに受診するようにしてください。

それ以外では、初めは多少違和感や不便があっても、入れ歯に慣れるためにはできるだけ使用を続け、その中で見つけた問題点や希望は、検診で歯科医に伝えるようにしましょう。

努力や調整をしても苦痛が改善されないときは

慣れる努力をしたり、歯科医に何度か調整をしてもらったりしても一向に状態が改善されず、入れ歯使用に苦痛を感じてしまうときは、入れ歯の形態そのものがお口の状態と合っていない可能性があります。その場合は、入れ歯の作り直しや他の歯科医の意見を聞くことも視野に入れ、よく検討するといいでしょう。

入れ歯には、様々な選択肢があります。1度作った入れ歯がお口に合わなかったからと言って、「入れ歯なんてこんなもの」「こんな使いにくいなら歯が無い方がマシ」そうやってあきらめてしまうのは、とてももったいないことです。

日常のお手入れ

入れ歯との付き合いで、日常のお手入れはとても重要です。お手入れが不十分で不潔な状態の入れ歯を使っていると、入れ歯が劣化するだけではなく、残っている歯のむし歯や歯周病の原因となってしまいます。また、お手入れ不足の入れ歯が原因となった義歯性口内炎は、そこから全身の感染症へつながる可能性もあり、体全体の健康に影響がおよぶことも考えられます。

入れ歯の清潔さを保つためには、毎食後に一度入れ歯を外し、口の中と入れ歯を別々にお手入れしましょう。安定の目的で入れ歯をつけたまま眠るよう指示が出ている場合や、外さずに眠るテレスコープ義歯を使用している場合も、夜のお手入れの際には必ず外して行うようにしてください。

ブラシでのケア

入れ歯を外したら、まず流水で汚れをザッと流し、その後入れ歯専用の歯磨き剤を使ってブラシで磨きます。一般的な歯磨き剤は入れ歯を傷める原因となるので、入れ歯の素材に合った専用のものを使用するようにしましょう。

ブラシも入れ歯専用のものがおすすめですが、ナイロン樹脂を使ったやわらかいノンクラスプ義歯などはブラシや入れ歯用歯磨き剤の使用が向いていないので、お手入れ方法を歯科医や歯科衛生士に確認しておきましょう。

クラスプ(金属製のバネ)やアタッチメント(取り付け用の部品)がついた部分入れ歯は、細かなところに汚れがたまりやすいため、とくに注意してブラシをあてましょう。小さなすき間があるものは、専用の極細ブラシなども使います。

テレスコープ義歯の場は義歯側の冠の内側を磨くために、小さなヘッドのワンタフトブラシの使用がおすすめです。

また、多くの入れ歯はレジンというプラスチックが使用されていますが、レジンは強くこするとすり減ってしまうので、力を入れ過ぎないように注意しましょう。

磨いた後は流水でよくすすぎます。小さな部分入れ歯は落として流してしまうことがあるので気をつけてください。

入れ歯洗浄剤でのケア

ブラシだけでは取りきれない汚れには、入れ歯洗浄剤の使用が有効です。汚れは目に見えるものばかりではないので、細菌の繁殖を防ぐためにも、少なくとも週に1度は入れ歯洗浄剤を使いましょう。毎日つけておくタイプのものもありますが、入れ歯の素材によって向き不向きがあるので、歯科医や歯科衛生士の指示に従ってください。

洗浄剤には様々な種類があります。一般的に一番多く市販されているのが過酸化物系、入れ歯を一番傷めにくいとされているのが酸素系です。これ以外に、次亜塩素酸系や酸系のものもありますが、金属や軟質材料を傷める原因となるのであまりすすめられていません。

使用の際は製品の特徴を確かめ、入れ歯の素材に合ったものを選びましょう。迷ったときは、歯科医や歯科衛生士に相談をしてください。

家庭用超音波洗浄器でのケア

メガネ店でよく見かける小型の超音波洗浄器は、入れ歯のお手入れにも有効とされています。超音波の振動によってブラシでは届かない細かな部分の汚れを落とすことができるもので、10,000円前後の価格で家庭用に市販されています。

入れ歯を外したお口のケア

入れ歯のお手入れの後には、入れ歯を外したお口の方も丁寧に磨きましょう。とくに、入れ歯をつけていた部分の周辺には汚れがたまりやすいので、歯が残っている方はフロス(糸ようじ)や歯間ブラシも使ってお手入れをしましょう。

テレスコープ義歯は残っている歯に冠をかぶせてあって密着性が高いので、汚れはつきにくくお手入れがしやすいのが特徴です。ただ、残っている歯の冠と歯肉の境目は汚れがつきやすいポイントです。意識的にブラシをあててお手入れをしましょう。

洗浄後の扱い方

入れ歯とお口の洗浄が終わったら、入れ歯の水気をペーパータオルなどで吸い取りお口に戻します。

テレスコープ義歯以外の入れ歯は、指示が出ていないかぎり、夜間は外して眠るのが基本です。テレスコープ義歯はつけておいた方が安定しやすい入れ歯なので、洗浄後は取り付けて眠ってください。

外して眠る入れ歯の場合は、入れ歯専用のフタのついたケースに水を張り、そこにつけて保管するのが基本です。水は必ず毎回新しいものに変え、ケースの清潔さも保つようにしましょう。

水につけるのは素材の乾燥を防ぐためですが、不潔な水につけておくくらいなら、綺麗に乾燥させた状態で保管した方がいいと言われています。最近は、とくに水へつけておく必要は無いと言われる場合もありますので、担当の歯科医に確認しましょう。

歯科医院での定期健診とお手入れ

毎日確実にお手入れしたとしても、やはりホームケアだけでは限界があります。入れ歯を使い始めたら、歯科医院で健診とお手入れを定期的に受けるようにしましょう。

入れ歯の使用感が変化してきたときは

ピッタリとお口に合った入れ歯も、使っているうちに使用感が変化し、上手く合わなくなってくる場合があります。その場合は調整の必要がありますので、歯科医院を受診してください。

合わなくなる原因は、入れ歯の素材や部品の変形だけではなく、お口や体の方の変化によるものがあります。人の体は常に変化しているので、歯肉や骨や筋肉の状態が変われば、入れ歯が合わなくなってしまうことは避けられません。

良い入れ歯は一生ものですが、そのためには、日常でのお手入れを欠かさず、歯科医院でのチェックや調整を続けていくことが大切です。

まとめ

入れ歯が合わない12の原因」という記事で、原因ごとの対処をまとめていましたので、こちらもぜひ参考にされてください。
入れ歯は、作ったら終わりの一時しのぎのものではありません。この先何十年も体の一部として付き合い、生活をともにする大切なパートナーです。入れ歯作りの際には、日常のお手入れのしやすさ、使いやすさ、長持ちのしやすさなども視野に入れた検討をおすすめします。

テレスコープ義歯は素材が劣化しづらいため、調整をしながら30年以上使い続けている方もいらっしゃる入れ歯です。また、お手入れのしやすさや使いやすさの面でも優れています。

入れ歯は、食事や人との会話など、生活の上でとても重要な部分を左右するものです。靴や車以上に、品質へこだわってみてもいいのではないでしょうか。

 

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