入れ歯は人生を決める選択肢!高い買い物ではありません

「入れ歯が合わず、もの噛むと違和感や痛みがある」
「入れ歯の隙間から息が漏れて、話しづらい」
「口を大きく開くと、入れ歯がずれてしまう」

 そんな悩みをお持ちではありませんか?
 入れ歯で苦労されている方は、思いのほか多くいらっしゃいます。
 また、今は入れ歯をしていない人も、入れ歯にそんなイメージをもっているために、いざ入れ歯を入れなければならなくなったとき、人生の終わりが来たかのように絶望してしまったりするのです。

 つまり、非常に多くの方が、「入れ歯なんてそんなものだろう」と諦めてしまっているのです。

 入れ歯は日常生活で、絶え間なく身につけているものです。ものを噛むときや話すとき以外はそれほど意識することがありませんが、ほかにも多くの役割を担っています。もし、その入れ歯がお口に合っていなければ、それは大変なストレスとなってしまいます。

 たかが入れ歯と思うかもしれませんが、場合によっては命に関わるような病気の原因になることもあります。その一点をとっても、じつは入れ歯の善し悪しは、人生を変えてしまうほどのものなのです。入れ歯ひとつで生きる楽しみを捨ててしまうのでは、あまりにももったいなくありませんか?

「自分の口にぴったり合う良い入れ歯は高い。手が届かない」
 そんなふうに思っている方もたくさんいるはず。

 もう一度よく考えてみましょう。
 あなたの人生において、入れ歯は、はたして本当に高い買い物なのでしょうか。

なぜお口に合った入れ歯が必要なのか

なぜお口に合った入れ歯が必要なのか 人間は大体50歳くらいになると、自然と歯が抜けるようになっていきます。80歳では、ほぼ半数の人が総入れ歯になると言われています。もっと若い方でも、事故や病気で歯が抜けてしまうことがあります。

 歯が抜けてしまった場合、入れ歯などで補わなければなりません。しかし、ひとくちに入れ歯と言っても、さまざまなものがあります。なかには「歯が入っていれば、どんな入れ歯でも構わない」という方もいらっしゃるでしょう。でも、そういうわけにはいかない理由があります。

 例えば、靴を思い浮かべてみてください。ハイキングなどで長時間歩かなければならないときは、ほとんどの人は自分の足に合った靴を選びます。サイズの合ってない靴や脱げやすいサンダルで、ハイキングに出かける人はいないのではないでしょうか。

 それは、足に合った靴のほうが歩きやすいからです。きつい靴や脱げやすい靴では、長時間歩くのは難しいでしょう。場合によっては、足に合わない靴を履いていたために躓いたり転んだりして、重大な事故の原因にもなってしまいます。

 入れ歯も同じこと。お口に合っていない入れ歯では、日常生活を快適に過ごすことはできません。それどころか、ともすれば病気や事故の原因にもなってしまうのです。

 いかがですか。そう考えると、良い入れ歯も決して高い買い物ではないと思いませんか?

よく噛めないと全身の栄養状態が悪化します

よく噛めないと全身の栄養状態が悪化します お口は顔のパーツのひとつですが、消化器官でもあります。歯を使って噛み切り磨り潰すことで、食物が消化できるようにする役割を持っています。入れ歯が合っていないと、この消化器官としての役割を十分に果たすことができません。

 お口で細かくされずに飲み込まれた食物は、胃で消化するのに時間がかかってしまいます。すると胃に負担がかかり、胃もたれや胃の痛みといった症状を引き起こすことがあります。

 また、食べたものが胃で十分に消化されないと、小腸が効率よく栄養を吸収することができません。そのため、お腹を下したり、お腹の膨満感があったり、体重が減ってしまったりといった症状が起こることがあります。これは「吸収不良症候群」と呼ばれる状態です。

 なによりも、お口に合わない入れ歯で違和感や痛みがあると、食事を美味しく味わうことができません。すると、食事が楽しくなくなったり、食事に苦痛を感じたりします。その状態が続くと、食欲不振になってしまいます。

 うまく噛めなければ、食べられるものにも制限が出てきてしまいます。食べやすいものばかりを選んで食べていると、栄養が偏ってしまうこともあります。その結果、体の抵抗力などが落ちて、感染症などの病気にかかる可能性が高まってしまいます。

飲み込むときにも入れ歯が関係している

飲み込むときにも入れ歯が関係している 噛むという作業だけでなく、飲み込むときにも入れ歯が大きく関わってきます。私たちは1日に1.5リットルもの唾液を出しています。これはお口の中を洗い流すと同時に、食物を喉へ送り込みやすくするためです。

 きちんと食べ物を噛めていれば、唾液は十分に分泌されます。しかし、噛む回数が少なかったりうまく噛めなかったりすると、唾液の量が少なくなってしまいます。すると、間違って食べ物や飲み物が肺に送られてしまう「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなるのです。

 また、人間は食べ物や飲み物を喉に送り込む際、舌を上あごにくっつけて圧力を発生させます。うまく飲み込むためには、舌が自由に動く状態でなければなりません。しかし、お口に合っていない入れ歯だと、舌の動きが制限されてしまいます。するとやはり、誤嚥を起こしやすくなるのです。

 誤嚥を起こすとむせるだけでなく、誤嚥性肺炎などの病気の可能性も高まります。とくに高齢者の方は、誤嚥をしても気づかないことがあり、最悪の場合は、死に至ることもあります。

 しかし、お口に合った入れ歯なら、よく噛めて舌の動きを妨げることがありません。食事も美味しく味わえます。良い入れ歯を選ぶことは、全身の健康を守ることにも繋がるのです。そう考えると、決して高い買い物ではないと思いませんか?

きちんと噛むことが脳に刺激を与える

 人間の体は、じつに複雑にできています。どのパーツをとっても、さまざまな役割を担っています。そのすべてがバランスよく働いてこそ、健康でいられるのです。

「噛む」という行動も、ただ食物を細かくするだけのものではありません。
人間に必要な「咀嚼」について考えたら「生きがい」にたどり着いた」という記事でも、そのメカニズムを紹介していますが、よく噛むことは人間の生きがいにもつながる大切な行動です。

 食べ物をお口に入れたとき、人間の脳はその硬さや舌触り、匂いや味などたくさんの情報を瞬時に処理して、どのように噛むか判断します。また、噛むこと自体が刺激となって、歯ぐきを通して脳に伝わります。つまり、ものを食べるという行動をとっているとき、脳はものすごく活性化しているのです。

 東北大学が行った研究によると、健康な人では平均14.9本の歯が残っていたのに対して、認知症の疑いのある人は9.4本でした。それだけではありません。研究に携わった東北大学大学院歯学研究科長の渡邉誠教授は、インタビューでこのように語っています。

歯が少ないほど、記憶をつかさどる大脳の海馬付近や、意思や思考などに関係する前頭葉付近の容積が減少していることを突き止めました。痴呆の一つであるアルツハイマー病は、海馬の萎縮が進み、次第に前頭葉付近も萎縮することが知られています。ですから、痴呆の防止には、噛み合わせができる歯の数を多く保つことが大切なのです。

 

 歯の数、つまり噛むという行動は、脳に大きな影響を与えるのです。

 ほかにも、こんな例があります。
 2003年にAGES(愛知老年学的評価研究)プロジェクトの一環として、愛知県に住む65歳以上の方を対象としたアンケートと、その後4年間にわたる追跡調査が行われました。その結果を、日本福祉大学の近藤克則教授や神奈川歯科大学の山本龍生准教授(当時)をはじめとする厚生労働省研究班が分析したところ、こんな事実が判明しました。

20歯以上の人に対して歯がほとんどなく義歯未使用の人の認知症発症リスクは1.9倍,なんでも噛める人に対してあまり噛めない人のリスクは1.5倍,かかりつけ歯科医院のある人に対するない人のリスクは1.4倍であった。

 

 こういった研究結果からも、よく噛むこと、しっかり噛めることには大切な意味があると分かっていただけると思います。

衰えた記憶力が入れ歯で復活する!?

「今さら良い入れ歯を作ったところで、一度悪くなったものがよくなることはないだろう」

 なかにはそんなふうに考える人もいるかもしれません。しかし、入れ歯を作るのに遅すぎるということはありません。

 神奈川歯科大学歯学部では、奥歯を削ってよく噛めなくしたマウスと正常なマウスの記憶力を比較する実験を行っています(小野塚實教授、「モリス水迷路学習の実験」)。奥歯を削られたマウスは、正常なマウスよりも記憶力が悪くなり、ゴールにたどり着くまでに時間がかかったといいます。

歯周病などで歯を失い、噛み合わせが悪いままにしておくと、認知機能や記憶力の低下が進む可能性があります。ところが、噛み合わせを修復すると、低下した機能が回復することが判明しました。マウスの実験(モリス水迷路学習)では、奥歯を削って噛みにくくしたマウスは記憶力や空間認知能力が低下しましたが、歯科用セメントで歯冠修復して噛めるようにしたマウスは、噛み合わせが正常なマウスと同等の結果に近づきました。

 

 つまり、記憶力が一度悪くなってしまっても、しっかり噛めるよう治療すると記憶力も復活するというのです。

 これはあくまでマウスでの実験結果ですが、人間でも同じように、「入れ歯を作り直したら、もの覚えがよくなった」「なにをするにも面倒だったのに、やる気が出てきた」といった報告が多くなされています。

 お口に合わない入れ歯を我慢して使い続けるのは、節約ではありません。人生を損しているのと同じことです。自分に合った入れ歯ひとつで人生が取り戻せるのなら、お金には変えられない価値があるのではないでしょうか。

入れ歯の役割は噛むだけではない

 次に、「噛むこと」以外の入れ歯の役割をみてみましょう。

 お口には、食べ物を咀嚼して飲み込む以外にも、言葉を話したり、息をしたり、笑ったりと、さまざまな役割を担っています。まさに、私たちの日常生活に直結しているパーツと言えますね。

 お口に合わない入れ歯を使っていると、息が漏れてはっきりと発音できなくなることがあります。
 相手が言葉を聞き取れず、何度も聞き返されることが続くと、次第に話すのが面倒に感じるようになってしまいます。

 言葉は人間同士が分かり合うための、大切なコミュニケーション手段です。それを面倒に感じてしまったら、人付き合いも上手くいかなくなってしまいます。

 じつは人間は、力をいれたりバランスをとったりするとき、無意識に歯を噛みしめています。
 試しに、重い荷物を持ち上げるときに、口を開けた状態と閉じた状態で比較してみてください。口を閉じているほうが、楽に荷物を持ち上げられるのではないでしょうか。

 転びそうになって、手や足をついてバランスをとるときも、しっかり噛みしめられるかどうかが重要なポイントになってきます。歯を失うとどのくらい転びやすいのかについては、厚生労働省研究班による分析研究結果が発表されています。

転倒経験者の割合は,歯数が少ない人ほど高くなった。転倒との関連がみられた性,年齢,追跡期間中の要介護認定の有無,うつ,主観的健康観,教育歴を考慮し,リスクの度合いを計算すると,20歯以上の人に対して19歯以下で義歯未使用の人の転倒リスクは2.50倍であった。

 

 コミュニケーションをとるのが面倒になり、転びやすいとなったら、外に出かけるのが億劫になってしまう人も多いことでしょう。そうしてずっと家の中にこもってしまうと、脳への刺激も少なくなります。すると今度は認知症のリスクもさらに高まってしまうことになるのです。

 言葉を発することもやめ、外出もせず、だんだんと痴呆が進んでいく……そんな人生をあなたは望みますか?

抜けた歯を放置すると健康な歯も悪くなる

 また入れ歯は、失ってしまった歯を補うだけのものではありません。ぴったりと合った入れ歯を作ることは、残った歯を守るためにも重要なことなのです。

 じつは歯は、隙間なく並んでお互いに支え合うことで、かかる力を分散しているのです。隙間が空いてしまうと支え合うことができなくなり、残った歯に余分な負担がかかってしまいます。

 歯が抜けた状態で放置すると、その隙間に隣り合っている歯が次第に傷んできます。1本、また1本とダメになり、隙間がどんどん大きくなってしまいます。

 さらに、一部の歯が抜けたままになっていると、頭痛や肩こりといった症状が出てくることがあります。これは口を動かす筋肉が、首や肩の筋肉と直結しているから起こるのです。

 歯が抜けた部分ではきちんと噛めませんから、無意識のうちにほかの部分を使ってものを噛むことになります。左右どちらしか使わないことで、片側の筋肉だけに負担が偏ります。それが肩こりや頭痛の原因なのです。

 たった1本の抜けてしまった歯を放置したために、頭痛や肩こりに悩まされ、やがては総入れ歯ということも。たとえ抜けた部分を入れ歯で補っても、それが合っていなければ同じようなことが起こってしまいます。そんな結末を迎えないためにも、お口にぴったり合った入れ歯が必要なのです。

良い入れ歯には、人生にかかる総医療費を抑える効果が

 それでも「入れ歯は高い」と思っているあなたに、知ってほしいことがあります。

生涯医療費 じつは、歯が健康な人ほど、一生涯にかかる総医療費が少なくなるというデータがあるのです。
 これは全国各地の医療機関などの調査によるもので、たとえば、トヨタ関連部品健康保険組合と豊田加茂歯科医師会が共同で行った調査を見てみましょう。この結果は新聞でも報道されたので、目にした方も多いのではないでしょうか。

 定期受診の人は48歳までは総医療費が平均より高かったが、49歳を過ぎると平均を下回る分布傾向となった。65歳になると平均が35万円に対し、定期受診の人は20万円以下とその差は広がっていく。
 組合は「歯が悪いと食事が偏ったり、歯並びが悪くなったりする。それが糖尿病や肩凝り、骨粗しょう症を招き、体全体の健康に影響する」と分析。48歳までは歯科の定期健診費用で年2万円ほどが加わり、医療費が平均より増えるものの、その後は医療費が抑えられるため、歯科の費用を含めても「生涯医療費」は平均を下回ると結論づけた。

 

 厚生労働省と日本歯科医師会は、1989年から「8020運動」というものを推進しています。
「8020運動」とは「80歳になったとき、20本以上の歯を保っていよう」という意味で、この活動を受けて、阿蘇郡地域歯科保健連絡協議会は1997年に、8020達成者と非達成者を比較した調査を行いました。その結果について、熊本県歯科医師会はこんな発表をしています。

歯科医療費については、達成者は非達成者より3,725円高くなっておりますが、医科を含めた全体の医療費は323,200円低くなっております。すなわち、お口の健康を保つことは、全身疾患の発症を予防し、結果として、全体の医療費は大幅に削減できると言えます。

 

 お口のメンテナンスに手をかけることで、ほかの病気や体の不具合が予防できるのです。
 結果として全体の医療費が約32万円も安くなるのなら、入れ歯に多少の金額をかけたところで決して損ではないと思いませんか。ましてや、これまでご紹介してきたように、人生のさまざまなリスクが入れ歯によって回避できるのです。
 また、デンタルローンが使えれば、誰でも自分の希望する治療が受けられます。お口にぴったり合った入れ歯は欲しいものの、治療費が用意できないという理由だけで諦めている人にはぜひお勧めします。

 もう理解されたことと思います。
 あなたの人生にとって、入れ歯は決して高い買い物ではないのです。

まとめ ~お口を健康にして充実した人生を

 近代の歯科医学が確立するまでは、歯痛を抑えるためには歯を抜くしかありませんでした。その抜いた歯を補填するために、入れ歯というものが生まれたとされています(「入れ歯と歯科の世界史<古代編>」という記事をご覧ください)。

 人はみんな、顔つきも骨格も違いますから、自分にぴったりと合う入れ歯は、世界にたったひとつのオーダーメイドです。他人の入れ歯を使うことはできません。

 この記事で紹介してきたように、入れ歯の役割は、食べ物を噛み切って細かくすることにとどまりません。
 お口にぴったり合った入れ歯が、見た目が美しく、言葉がはっきりと話せて、歩くときの足下もしっかりするとなったら、外出も楽しくなるのではないでしょうか。

 反対に、合わない入れ歯を我慢して使っていると、体全体にさまざまな不具合が起こってきます。食べることも話すことも動くことも面倒になり、多大なストレスがかかってしまいます。

「入れ歯を作ったら若返った」「入れ歯を作り替えたら、やる気がわいてきた」といった話はよくあること。つまり、その人が精神的にも社会的にも自分らしくあるためには、ぴったりと合った入れ歯が必要不可欠なのです。

 これから入れ歯治療を始めようとしている方も、まったく悲観することはありません。

「費用がかかるから」「時間がとれないから」「面倒だから」といった理由で、合わない入れ歯を放置したり、入れ歯治療に二の足を踏んだりすることは、いわば、人生を捨てているのと同じだと言えます。自分にはそれだけの費用や時間をかける価値がない、と言っているようなものなのです。

 どんなに優秀な歯科医でも、本人が望まない治療をするわけにはいきません。
 お口の健康、ひいては自分の生活の質を保つためには、まず自分から動かなればならないのです。

人間に必要な本能「咀嚼」を入れ歯が取り戻してくれる」という記事で詳しく書きましたが、「ものを噛むこと」は、人間の大切な本能なのです。
 どうか自分を大切にして、お口の健康を守ってみてください。
 今からでは遅すぎるということは、決してないのです。

 

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