保険は使えるの?ローンは?入れ歯にかかる費用を教えます

 体の一部として一生使い続ける大切な入れ歯。
 だから品質にこだわりたい、と思ったとしても、費用のことはやはり気にかかってしまいますよね。

 実際のところ、入れ歯をつくるにはどの程度の費用がかかるのでしょうか?
 保険は使えるの? 車みたいにローンは組めるの? インプラントやブリッジとどちらが安いの?
 たくさんの疑問もあると思います。
 この記事では、入れ歯にかかる費用について詳しくご紹介します。

入れ歯に保険は使えるの?

 歯科医院や病院では、保険適応内の治療の場合、健康保険証を提示すれば保険を使うことができます。
 保険を使えば、健康保険組合が治療費の大部分を負担してくれるため、患者さん自身が窓口で支払う費用は、実際にかかった金額の1~3割程ですみます。負担額は、加入している保険の種類や年齢により異なります。

 もちろん、入れ歯治療にも保険が使えます。
 しかしながら、日本の健康保険制度は「生活に支障がない最低限の治療を補助する」ことが目的ですので、高品質な素材や特殊な入れ歯を希望した場合には、残念ながら保険を使うことができません。

保険が使える入れ歯とは

 2017年4月現在、保険が使える入れ歯の条件は以下のように決められています。

部分入れ歯

構成

  • 人工の歯肉(床)
  • 人工歯
  • 残っている歯にかける金属のバネ(クラスプ)
  • 固定するための金属のバーとその他部品

素材
人工の歯肉(床):

  • レジン(硬めのプラスチック)
  • スルフォン樹脂(弾性のあるプラスチック)

人工歯:

  • レジン歯
  • 硬質レジン(レジンを強化したもの)歯
  • スルフォン樹脂歯
  • 床用陶歯

クラスプやバーなど金属部品:

  • 金銀パラジウム
  • 14K
  • ニッケルクロム合金・コバルトクロム合金

総入れ歯

構成

  • 人工の歯肉(床)
  • 人工歯

素材
人工の歯肉(床):

  • レジン
  • スルフォン樹脂

人工歯:

  • レジン歯
  • 硬質レジン(レジンを強化したもの)歯
  • スルフォン樹脂歯
  • 床用陶歯

 保険が使える入れ歯の場合、これらの中から患者さんの状態に合わせ、適切なものを歯科医が選んで組み合わせます。
 構成や素材以外の型取りや検査の方法などにも決まりがあり、それ以外のことを行った場合は保険を請求できなくなってしまうため、あくまでも決められた範囲の中で入れ歯治療をすることになります。

 また、レジンや人工歯の素材なども、高品質なものを選ぶと保険は使えなくなります。上に書かれた素材であれば、どの製品でも保険が使えるというわけではなく、各素材ごとに細かな取り決めがあります。

 保険内の入れ歯はお口に合わせるのが難しいと言われるのは、このように、保険制度の狭い範囲の中でしか素材や方式を選べないことが大きな理由です。

保険が使えない入れ歯とは

 上に書いた以外の入れ歯は、どれも保険が使えません。

  • テレスコープ義歯
  • 各種アタッチメント義歯
  • インプラント義歯
  • ノンクラスプ義歯

 などの入れ歯や、保険で決められた以外の素材を部分的に使用したり高度な技術を必要としたりする入れ歯は、基本的にすべて全額自己負担となります。

 また、

  • 6か月以内に同一部位の入れ歯を作りかえた場合

 には、保険内で決められた範囲の入れ歯であっても、保険を使うことはできない決まりになっています。6か月以内の同一部位の入れ歯の作りかえについては、やむを得ない事情があると認められれば、保険を使うことができるケースもあります。

入れ歯にかかる費用

 入れ歯をつくろうとすると、具体的にはどの程度の費用がかかるのでしょうか?
 歯科医院によって採用している素材や方法が異なり、また、患者さんのお口の状態によっても費用は大きく変動するため、あくまで大まかな目安となりますが、ここでは種類ごとに大体の費用目安をご紹介します。
 実際に入れ歯をつくる際には、歯科医と十分に相談の上、あらためて詳しい見積もりをとって検討してくださいね。

入れ歯の費用の設定方法

 保険内の入れ歯の場合、使った素材や治療法を決められた保険点数によって算出しますので、同一素材の同一方法で作れば、どこの医院で作っても入れ歯自体の費用はほぼ同じになります(合わせて行う治療や医院体系によって、総治療費は変動します)。

 一方、全額自己負担の保険外の入れ歯は、各歯科医院が独自で価格を設定しています。その価格設定には、仕入れ先、採用しているメーカーや素材、技工所でかかる費用などとの兼ね合いに利益分が加味されていますので、単純に高価格だから高品質ということにはなりません。

 ほぼ同品質の入れ歯であっても、医院によって数万円以上の差が出ることはめずらしくなく、また、価格設定の方法も医院ごとに異なります。最初の検査から含めトータルの費用を設定している医院もあれば、検査費やオプションは別料金になっている医院もあります。
 そのため、ホームページ上に書かれた金額だけで比べることは難しいと言えます。保険外の入れ歯をつくる際は、歯科医とのコミュニケーションを密接にし、カウンセリングできちんと見積もりを取り、十分に納得した上で選択することがとても大切です。

 また、入れ歯の品質は、素材や種類だけではなく、歯科医や歯科技工士の腕にかかっている部分もありますので、歯科医や歯科医院に対する信頼感も重要なポイントと言えるでしょう。

保険内の入れ歯の費用目安

部分入れ歯

上下どちらか 5,000円~15,000円

総入れ歯

上下どちらか 約10,000円

保険外の入れ歯の特徴と費用目安

コーヌス・テレスコープ義歯(部分入れ歯)

 自分の歯を生かしたはめ込み式の部分入れ歯です。「入れ歯の先進国ドイツ生まれ『テレスコープ式の入れ歯』」で詳しく紹介しています。

メリット

  • 見た目、フィット感、噛む力に優れる
  • 修理しながら30年以上長く使うことも可能

デメリット

  • 自分の歯を削る必要がある
  • 技術が難しく扱える医院が少ない

入れ歯本体の費用
上下どちらかの片側 約20万~30万
土台として使う歯にかぶせる冠の費用:1本 約10万~30万

コーヌス・テレスコープ義歯は、残っている歯に冠をかぶせ、その上に入れ歯をはめこむ形になるため、入れ歯本体とは別に冠の費用が必要です。
冠は金属製ですが、保険の治療で使う安価な金銀パラジウム合金とは異なり、劣化しないゴールドなどの高価な貴金属を使います。

全体でかかる総費用は、冠をかぶせる歯が何本になるかで異なります。入れ歯本体が30万、冠1本が20万、4本に冠をかぶせるケースなら、30万+20万×4=110万ということになります。


ノンクラスプ義歯(部分入れ歯)

 柔らかで弾力性のある樹脂でできた入れ歯です。

メリット

  • 金属を使わずにすむ
  • 見た目に優れる

デメリット

  • 噛む力がでにくい
  • 素材が劣化しやすく作り直しが必要になることが多い

入れ歯の費用
上下どちらか 約10~20万


磁性アタッチメント義歯(部分入れ歯・総入れ歯)

 クラスプを使わず磁力によって固定する部分入れ歯です。

メリット

  • 金属のクラスプが無いので見た目がいい
  • つけ外しがしやすい

デメリット

  • 歯の根が残っていない場合は使えない
  • 固定力が他と比べて弱い傾向がある
  • MRI検査の際に処置が必要な場合がある

入れ歯本体の費用: 物により大きく異なる
磁性アタッチメント装置の費用: 1装置あたり 約1万~8万


各種アタッチメント義歯(部分入れ歯・総入れ歯)

 磁力ではなく金属のアタッチメント装置を使った部分入れ歯です。

メリット

  • クラスプと違って外に金属が見えない
  • 磁力に比べると固定力が強い

デメリット

  • アタッチメントの部分に汚れがつきやすい
  • 固定力の強いものは顎の骨に負担がかかる場合がある

入れ歯本体の費用: 物により大きく異なる
アタッチメント装置の費用:  1装置あたり 約3万~15万(アタッチメントの種類により異なる)


ホワイトクラスプ義歯(部分入れ歯)

 クラスプの素材を白いプラスチックに変えた部分入れ歯です。

メリット

  • クラスプが白いので目立たない

デメリット

  • 金属に比べると強度が低い

入れ歯本体の費用: 物により大きく異なる
ホワイトクラスプの費用: 1つあたり 約1万~3万

※アタッチメント義歯やホワイトクラスプ義歯は、固定の部品がメインなので、入れ歯本体がどのような素材や品質かは歯科医院によって大きく異なります。また、お口の状態や歯の本数によっても変動が激しく、全体の費用は約10万~50万程度と非常に幅が広くなります。


金属床義歯(総入れ歯)

 床の部分がレジンではなく金属の総入れ歯です。

メリット

  • 強度が高くフィットしやすい
  • 素材が薄く違和感が少ない
  • 熱が伝わるので食事の感覚が得やすい

デメリット

  • 修理が難しい

入れ歯の費用: 上下どちらか 約15万~50万(金属の素材によっても異なる)


シリコン義歯(総入れ歯)

 口内にあたる部分にやわらかなシリコンを使用した総入れ歯です。

メリット・入れ歯を口に入れたときの痛みが軽減される

  • レジンと比べるとフィット感が高くなる傾向がある

デメリット

  • 汚れがつきやすい

入れ歯のシリコン加工費用: 上下どちらか 約10万~20万

インプラントやブリッジ費用との比較

 失った歯を補う治療法には、入れ歯の他にインプラントやブリッジという方法があります。
 インプラントは、顎の骨に直接ネジを埋め込み、その上に人工歯を立てる方法です。
 ブリッジは、失った歯の両側の歯を支台にして人工歯を橋のようにわたす方法です。

 インプラントは、顎の骨に直接ネジを埋めるので固定がしっかりとし、上手く合えば自分の歯のように噛むことができます。その代わり手術が必要で、顎の骨の状態によっては適応できないケースがあり、費用もかなり高額になります。

 ブリッジは人工歯の素材を選ばなければ保険が使えますが、両側の健康な歯を削る必要があり、失った本数や状態によっては向いていないケースがあります。

「【徹底比較】ブリッジvs.インプラントvs.入れ歯」の記事では、ブリッジ・インプラント・入れ歯の特徴やデメリットを詳しく紹介しています。ぜひ参考になさってください。

インプラントの費用目安

骨に埋め込むネジ+人工歯 1本 約30万~50万
※顎の骨を増やすなど特殊な処置が必要な場合、さらに数十万から100万をこえる治療費が加算されることもあります。

ブリッジの費用目安

保険内 (前歯は白いレジン、臼歯は金銀パラジウム合金)

1本欠損 約1万~2万

保険外 (人工歯の素材が選べる)

1本欠損 約15万~45万

入れ歯治療に使えるローンや高額医療費控除制度

 入れ歯も高品質なものになると、それなりに大きな金額の費用になります。一度に払うのが難しい場合、車と同じようにローンが使えます。
 ローンといっても、患者さん自身が持っているクレジットカードを直接歯科医院で使用するわけではなく、「デンタルローン」という専用のローンを新たに申し込むことになります。
 デンタルローンを使用するためには、各銀行・信販会社の審査を受ける必要があり、それに通らなければローンを組むことはできません。
 デンタルローンの審査基準や内容は、各銀行・信販会社によって異なります。基本的には、各銀行・信販会社と患者さん自身が直接契約を結び、先に治療資金を貸し付けてもらうような形になります。
 ローンに申し込めるのは、定期収入のある20歳以上の人です。旦那さんが定職についていれば専業主婦の人も対象になります。未成年の人の場合は、保護者の名前でローンを組むのが原則です。
 また、デンタルローンには、先に現金一括で支払った治療費が家計を圧迫した場合に、後からローンを組んでその分を貸し付けてもらえるというシステムもあります(扱いの銀行・信販会社により異なる)

デンタルローンの例

ここでは、比較的多くの人が利用しているデンタルローンのプラン例をご紹介します。実際には様々なプランがあるので、申し込みの際にはよく確認をしましょう。

利用の流れ
ネットか電話で申し込みをする

審査を待つ

審査に通ったら本人確認書類や歯科医院の見積書を提出する

資金が指定口座に振り込まれる

治療スタート

特徴

  • 銀行への来店は不要
  • 専業主婦でも申し込みが可能
  • 治療費確定前の大まかな金額で申し込みが可能
  • 一般的なクレジットカードの分割・リボより低金利

利用限度額

10万~800万(1万円単位)

利率

年7.0%~11.0%(固定金利)

返済方法

専用カードによる返済

返済金額

毎月定額金額返済(3,000円以上~)

 デンタルローンについては、「知って安心、デンタルローンを活用しましょう」という記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

高額医療費控除制度

 歯科医院での治療では、高額医療費控除制度というものも利用できます。

 高額医療費控除制度とは、年間の医療費の合計が10万(もしくは合計所得金額の5%)を超えた場合に適応され、超えた分の医療費の額と所得の額に応じ、その年に支払った所得税や住民税から一定金額が控除されるものです。医療費は、保険・自費に関わらず、医療機関で受けたすべての金額を合計して申請できます。

 家族で家計が同一の扶養者がいる場合は、家族全員の合計で申請ができます。この制度を利用するためには税務署への確定申告が必要ですが、その際にすべての治療の領収書が必要です。処方された薬代や治療に必要な器具などにかかった費用も対象になるので、領収書を大切に保管しておきましょう。また、治療のためにかかった交通費も、日付と交通機関を記録しておけば、医療費として計上が可能です(ケースによる)。

 入れ歯を自費で作ることになれば、ほとんどの場合それだけで10万を超えることになるので、他の医療費の領収書もしっかりと保管し、3月の確定申告に備えましょう。

まとめ

 入れ歯も自費のものになると、車1台分ほどの費用がかかる場合があります。
 しかし、入れ歯は毎日の食事や会話に関わる重要な役割を占め、入れ歯の使い心地が生活の質を大きく左右すると言っても過言ではありません。
 とりあえずの費用の安さだけで入れ歯を選び、あとで結局作り直すことになってしまったという話もよくありますので、一生使う大切なパートナーという視点で十分に検討してみましょう。

 

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