知っておきたい入れ歯の知識①~本当は怖いクラスプとインプラント

知っておきたい入れ歯の知識①~本当は怖いクラスプとインプラント

歯はとても大切なものです。
残念ながら歳をとると歯の数が減る人が増え、20歯以上もつ人の割合は、40代で90%、50代で80%、60代で60%、70代では30%ほどしかいません。
食事を「おいしい」と感じるには、20本の歯が必要だと言われていますが、それは19歯以下になると、噛めない・食べられない食品が増えてくるからです。
そこで、健康を維持するためには、しっかり噛める入れ歯がとても重要になります。
入れ歯には、一般的な保険診療で作れるクラスプ式の入れ歯、インプラントなどがありますが、今回は、テレスコープ式の入れ歯をお勧めしている歯科医として、ほかの方式の入れ歯にはどんな問題があるのかということについて説明していきます。

クラスプ式入れ歯のデメリット:「抜歯装置」になりかねない!

クラスプ式入れ歯

保険診療のクラスプ式の入れ歯というものは、ご存じのように、ふたつの針金の腕で歯をつかむ構造をしています。
じつはこのとき、歯が抜ける方向に力が発生することになります。
ちょっと思い浮かべてみてほしいのですが、肉団子を作るときに、あんを握って絞るとプクっと出てきますよね。
それと同じような感じで、ぎゅっと押さえると、歯が抜ける方向に力が発生するわけです。
つまり、バネをかけているだけでも、常に歯が抜ける方向に力が作用しているわけです。

締めつけると押し出す力が働く

入れ歯が動くたびに歯が揺さぶられ、歯の周りの骨がすり鉢で擦るようにだんだん壊れていってしまいます。
つまり、クラスプ式の入れ歯は、だんだん歯を引き抜いていく、いわば「抜歯装置」のようなものであると言えるのです。
歯科医での治療で歯を抜くとき、歯科医はゆっくり歯を揺さぶりながら抜いていきますよね。クラスプ式の入れ歯は、それと同じような作業を、時間をかけて痛くない範囲でじわじわやっていくようなものなのです。
だから、クラスプ式の入れ歯を付けると、歯が抜けてきてしまうことになります。
具体的には、ぐらぐらするようになるにつれて、だんだん痛くなってきたり、歯が染みるようになっていくわけです。
そうなるまでにどのくらいの時間がかかるか。
人にもよりますが、1~2年でだんだん歯が揺れてくる人もいます。
保険診療で作った入れ歯は半年間作り変えできないことになっています。それは逆に言うと、「半年後には作り変えていい」ということ、つまり「半年もてばいい」というイメージなのでしょう。早ければ半年後には作り変えなければいけないわけです。
普通の方は、入れ歯を作ったらもう歯の心配をしなくてよくなると思う人がほとんどですから、半年しかもたないなんて言われると、さぞびっくりすることと思います。
こういう入れ歯は、基本的に作ってはいけないものだと私は考えています。

インプラントのデメリット:ばい菌に感染すると最悪の状態に!

クラスプ式の入れ歯がだめなことに気づき、満足できない人の中には、インプラントを選ぶ人もたくさんいます。
インプラントはしっかり噛めるし、取り外しの必要がありません。
ただし外科手術が必要ですから、誰もができるわけではなく、糖尿病の方や骨粗鬆症の方などは難しいと思います。

インプラント周囲炎

インプラントにしても手入れが悪いと歯肉炎と同じ状態になる

インプラントにすれば虫歯になることは一生なくなります。
しかし問題は、歯周病のような感じになることがあるということです。「歯」ではなく「インプラント」なので「インプラント周囲炎」と呼ぶのですが、病気としては歯周病と同じです。
歯周病もインプラント周囲炎も全身の血管の病気で、骨が溶けたところからばい菌が身体に入り、全身を回って様々な病気になります。
歯の周りにばい菌がつく歯周病の場合は、ある程度のレベルまでばい菌をきれいにとって歯の表面をツルツルにすれば、歯と歯茎の位置が下がりますから、健康な状態に治療できます。
しかしインプラントの場合は、表面が金属でザラザラしています。ただねじ状になっているというだけでなく、表面に加工がしてあって、顕微鏡で見るとザラザラしているのです。そのザラザラの間に骨が入り込むことで留まっているわけです。
そういう場所にばい菌がついてしまうと、もうどうやってもお掃除できなくなります。金属が溶けるような高温で掃除したら、骨のほうがそれに耐えられなくなってしまいます。
だから、インプラントの骨に埋まっている位置までばい菌に汚染されてしまうと、もう治療はほとんど不可能で、あとは対症療法で悪くなるのを遅らせることしかできなくなります。
インプラント周囲炎が進むと、膿がダラダラ出続けるようになり、だるさをおぼえて、身体的に辛い状態になっていきます。炎症がひどくなると口を開きにくくなり、周りの筋肉まで炎症を起こしてしまうこともあります。
日本人は我慢強い人が多く、限界まで我慢してしまう傾向があるようですね。
インプラントは、骨に2、3ミリくっついているだけでびくともしなくなり、骨と骨が篏合してがっちり留めているので、簡単には取れません。とるときはまた外科手術になって、周りの骨も削って一緒に取らなければなりません。
インプラント周囲炎になったら、骨があるうちに早めに取って、少し骨を復活させてから、もう一度同じ場所にインプラントを打つということになります。つまり何度も外科手術を受けなければならなくなります。

ばい菌に感染することがなければ、インプラントは非常に良い方法です。
もともと、なぜ歯がなくなってインプラントにしなければならなかったのかというと、ばい菌の感染をコントロールする生活習慣がなく、お手入れがうまくいっていないからですよね。その生活習慣を改めずにインプラントを打ってしまうと、またばい菌に感染して、とんでもないことになってしまうわけです。
ちゃんとお手入れする習慣があり、感染させなければいいと言っても、それを一生継続していけるでしょうか。
たとえば介護施設に入っている人には、インプラントにして大変なことになっている人がたくさんいます。
自分できちんと毎日歯磨きでき、歯科医院に定期的に通ってばい菌をコントロールできている間はよくても、病気で入院したりして歯磨きどころではない状況になったときに、ばい菌に感染してしまったら、もう元に戻せません。
感染する確率が低くても、いざ感染してしまうと、その人にとってかなりひどいことになってしまうということが、私がインプラントをお勧めしない理由です。

次回は、テレスコープ式の入れ歯が、ほかの入れ歯にくらべてどのように優れているかということについてご紹介したいと思います。

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